「狂った野獣」
1976年東映、中島貞夫監督による、バスジャックとカーアクションをメインに据えた映画。
うーん、バスのことが大好きなみなさまの中には、バスが破壊される映画には、嫌悪感を示す方もいるのかもしれませんが、ボクはバスマニアとして、大暴走しても、破壊されても、バスが、ちょっとでも出演する映画は、興味を持っています。
そして、この「狂った野獣」は、1994年のアメリカ映画「スピード」並みに、バスを主役にした、隠れた名作だと思います。
バスマニア的なお話をさせていただくと、バスは、日産ディーゼル4R系。
正にこの時代のバスを代表するような形式で、全国的に見られた標準型。
窓がいわゆる「バス窓」車ではあるが、ヘッドライトが4灯であるため、それほど古いバスという違和感も感じられない。
年式を、調べてみました。
この形式は、ヘッドライトが2灯から4灯になったのが、1968年、そして1970年には、客窓が、いわゆる「バス窓」からユニットサッシに変更されたようである。
したがって、1968年式か、69年式あたりと思われる。
1976年の映画なので、バスは、7年落ちか、8年落ちなので、都市圏の新車を導入するバス会社からすれば、若干旧式になりますが、全国的にみれば、まだまだ同じ型のバスもたくさん活躍していたはず。
もったいないと言えば、もったいない破壊ですが、現役のバスに近い型のリアリティある破壊ともいえると思います。
ドアが、今は少なくなった前後扉なのも、当時の京都市営バスや京都バスと通じていて、リアルさが増しているかもしれません。
犯人役の片桐竜次さんが車内放送設備をぶっ壊しますが、バスの車内放送用カセットは、エンドレスタイプの専用カセット(8トラックカートリッジ)を、終点で運転手さんが入れ替えていたなぁ、と懐かしく思いました!
1976年、東映が、「日本でもカーアクション映画ができるか!?」という命題に、全力で答えた!?2本の映画の内の1本。
深作欣二監督の「暴走パニック大激突」については、小学校のころ最初に観ていたのですが、この「狂った野獣」については、今まで全くノーマークでした!!
こんなに「バス」メインの映画なのに!!
いやぁ、バスマニアとして不覚!!!!
アメリカでは、1969年「イージー・ライダー」、1971年「バニシングポイント」、1974年には、「バニシング in 60"」という、バイク、車を主役とした映画がヒット。
1975年には、東映でも「トラック野郎 御意見無用」が空前の大ヒットとなる。
それに気を良くした、東映の岡田社長が、「ハリウッドに負けないカーアクション映画を作れ!!」と深作欣二監督に無茶振りしたのが、「暴走パニック大激突」。
いやぁ、「暴走パニック大激突」については、改めて感想を書きたいと思っておりますので、ここでは、簡単に感想を述べさせていただくに留めますが・・・
ボクが、きっかけは忘れましたが、最初に「暴走パニック大激突」を目にした、小学校のころ、その頃はまだ、深作欣二監督が、あの「仁義なき戦い」等々の名作を作った名監督とは知らなかったです。
その後も、中学校、高校・・・何となくストレスがたまると、ビデオに録画した「暴走パニック大激突」を何度も観てきました。
後半のカーアクションシーン!
宣伝文句は「激突車30台、炎上車20台、登場車200台」・・・いやいや、そんなに登場しないだろ!!笑
しかし、ヒステリックにとりあえず出演した車は、走行不能になるまで、丁寧に!?ぶっ壊す映画で、ストレス解消にはなります。
うーん、しかし、映画のストーリー、人間物語としては・・・ホントに深作監督自身がパニックになっているんじゃないかと思うような・・・前半、様々な人間ドラマが、これでもか!と、てんこ盛りに盛り込まれながら、全て唐突に、カーアクション、カースタントで大混乱のまま終わっていく映画!?
もう、何度も見ているから、ボクとしては嫌いじゃないのですが(むしろ好きなのですが)誉め言葉も含めて、「ヒドイ映画です!!」
それと比較して、この「狂った野獣」は、Wikipediaによると、かなり予算を削られたようで、映画用に購入された車両は、中古のバス1台とパトカー8台だけだったそうです。
しかし、予算を削られて、「バス」に的を絞らざるを得なくなったことで、「暴走パニック大激突」のように大風呂敷を広げ過ぎることもなく、コンパクトにまとまった良い作品になったのでは?と思いました。
乗り合わせた乗客の偶然性による面白さや、癖があって個性が強いながらも、「乗客それぞれが、実際にいそうな、人間社会の縮図、デフォルメ」みたいなところが、「バスの中」という閉鎖空間のために、散漫にならないで、面白さが増したと思います。
「The 関西のおばちゃん」!ともいうべき、強気で自分勝手なおばちゃん、存在感たっぷりな、橘麻紀さん演じる女(ニワトリを抱きながら放心する姿、最高!!)、不倫男女、訳アリのチンドン屋一行に、金に目の無いおっさん、老人、小学生(その親は、エゴの塊で、警察を振り回す)。
みんな最後には、渡瀬恒彦の盗んだ宝石に群がる、まさに社会の縮図!!
そして何より、銀行強盗にも失敗して、バスジャックしたものの、癖の強い乗客の勢いに抵抗され、自分のやったことが怖くなって、どんどん気弱にトーンダウンしていく川谷拓三さんが、本当に見事なハマリ役!!
感情移入し過ぎちゃって、拓さんが最後に狙撃されてしまうのが、かわいそうになってくるもの。。。
渡瀬恒彦さんは、この映画のために大型免許を取得して、ノースタントでバイクからバスに飛び乗るわ、最後にはバスを横転させちゃうわ、ハッスルしまくり!!
東映ピラニア軍団の拓さんと片桐竜次さんは、バス横転シーンで、顔も写らないのに、渡瀬さんの運転するバスに乗り込んだという笑
ガラスが割れた窓越しに、渡瀬さん本人の運転がバッチリ映っています!!
あ、「暴走パニック大激突」でも、渡瀬さんがノースタントで運転しているのを見せたいから、渡瀬さんの車の運転席側のドアが外れたのね!!と、今更ながら納得!笑
ストーリーもテンポよく、無駄のない、バスをふんだんに映したバスジャック映画!
バス好きのみなさまにも是非おススメの映画ですwww
バス好きのみなさまにも是非おススメの映画ですwww